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猟師かんこ踊り(三重県松阪市猟師町) ←前へ 1 2 3 4 5 6 7 次へ→
全国盆踊り


日程・場所・プログラム

日程
現在の猟師かんこ踊りは、八月盆の13日より15日の3日間、盛大に催されます。
実際には、準備は2ヶ月、練習は2週間ほど前から青年団の手によって始められています。

13日

@海念寺

子ども踊り(海念寺)
夕方7時過ぎ、檀那寺である真宗高田派海念寺の庭でかんこ踊りが始まります。新盆の供養のための踊りです。

平成16年のお盆は、まず小学生の踊り、続いて8時過ぎより青年団の踊りが踊られました。1回の踊りは3〜40分あまりも続きます。
この時間帯は数はまだ少ないですが、「かんこ踊り」の踊り子を取り巻くように、「うちわ踊り」も踊られます。
A新盆宅

新盆宅前の踊り会場
お寺での踊りの後、人々はあらかじめ決められた予定に従って新盆の家を訪れます。
海念寺からはバイクに乗った踊り子が、脇に太鼓を抱えて移動していったのが印象的でした。

新盆の家では、仏前を造花で飾り、提灯に火をともし、踊りの場所の準備をして一行を迎え入れます。当主より志が渡され、途中休憩をはさんで約1時間で2回踊られます。
新盆の家の周りは踊り子、青年団、見物客でたいへんな賑わいでとても印象的です。

「あたかも新盆の家に明るさとりもどすひと時である」(「松阪市史史料篇民俗」)。

踊りは新盆の家々を回り、朝4時〜5時になるとのこと。青年団の人の話では、この日は最後は海念寺で2回、計10回の踊りが踊られるとのことでした。

B「魚の供養」
数軒の新盆の家を回ったあと、魚の供養が漁業組合の手で行われます。

14日

15日
13日同様に新盆の家の供養踊りが行われ、両日ともに最後に広場(公民館前=海念寺前)に移動して踊ります。
踊りの輪(うちわ踊り)もひときわ大きくなります。

徹夜踊り
猟師町も、隣の松ヶ崎も、お盆のかんこ踊りの3日間は、夜中見物客や町の人でにぎわいます。新盆の家が多ければ、自然と毎晩徹夜踊りになるようです。しかしあえて「徹夜踊り」と強調することもなく、「盆踊りは徹夜で踊るのがあたりまえ」という踊り子たちの様子が印象的でした。
行事の形式

@寺や有力者の家の庭を皮切りに踊り始め、
A初盆の家や地域内の霊的スポットなどを廻って踊っていく。
というのが、わが国の古い念仏踊りの形式であり、東北地方から沖縄地方まで、文字通り全国に広く認められる形式でもあります。ただし、近代の交通規制などから、多くの時期で失われてしまった(単なる輪踊りになってしまう)形式でもあります。
猟師町のかんこ踊りも、まさにこうした形式を残す古式ゆかしい伝承行事です。
行事の目的

新盆供養
猟師町のかんこ踊りは、伊勢志摩の盆行事と同じく「新盆供養」の意味合いの濃い内容となっています。

踊りに向けられた遺影
踊り始めに海念寺で踊られる踊りも、新盆供養の目的と位置付けられています。実際、私達が見学したときも、見物客の中に、踊り子に向けて遺影を掲げている人の姿がありました。

おそらく新盆の家の家族の方と思われますが、こうしたところにも猟師かんこ踊りの新盆供養の意味合いが形式的なものではなく、今も生きた伝承として受け継がれていることがうかがわれます。
しかしながら、新盆供養の意義は、その後の新盆の家を巡る道行きと「供養踊り」にみられます。夜通し新盆の家々を巡って踊られる供養踊りは、時間的にも内容的にも、あきらかに猟師かんこ踊りのメインプログラムとなっているといえます。

新盆の家のお盆は、普通どこかしんみりしたものを想像させます。ところが猟師のかんこ踊りでは、新盆の家をたくさんの若者や町の人、そして見物客が新盆の家のそばの細い路地にあふれて、お祭りのようなたいへんな賑わいです。

「死者供養」と「生命の祝祭」。盆踊りはもともとこの2つの原理が交錯する場なのですが、ここ猟師町ではいまも独特の感動的なやり方でいまもこの精神を受け継いでいるのです。  
隣町の松ヶ崎町にも、同じように新盆重視のかんこ踊りが伝承しています。


魚供養
猟師町の盆踊りがユニークなのは、踊りの目的の一つに「魚の供養」というものがある点です。
新盆の家の供養が終わった後、漁業組合の手によって「魚供養」が行われます。この魚供養は、起源伝承においてもすでに語られているものです。
海辺の猟師町ならではの盆踊りの目的といえます。
その他の出し物

屋台

海念寺門前の屋台
猟師かんこ踊りの主要舞台である海念寺のまわりには、金魚すくいや清涼飲料などの屋台が出、子ども達や見物客の人気を博しています。

猟師かんこ踊りは、町の人にとって楽しい夏祭りの場所にもなっているのです。
ひと・組織・経済

青年団・保存会
伊勢地方の地域社会は、ムラ社会の年齢階梯制が色濃く残る土地です。県下のかんこ踊りやさまざまな伝承芸能は、今もむかしながらの青年団の手により伝承されています。

猟師かんこ踊りも、青年団が中心となり、「猟師かんこ踊り保存会」の手によって守られています。
「昔から1度も欠かしたことがない」という猟師かんこ踊りの強力な伝承力は、この青年団の結束の強さによっていると思われます。

踊りの練習から会場の設営まで、様々なシーンで青年団が活躍しています。

猟師青年団のはっぴ

青年団の拠点、猟師公民館。「猟師かんこ踊り本部」の大漁旗も見える。
盆踊りの経済
地域ぐるみの伝承芸能は、当然のことながら費用がかかります。猟師かんこ踊りも、地域の人々の協力金、昔でいうところの「」が支えとなっています。

写真は、16年度の盆踊りの際の、町内の1軒ごとの負担についての掲示です。ジュース・ビールなどの飲み物のほか、踊り子や音頭とりへの手当金、夜食などがきめ細かく規定されています。

(参考資料)

「松阪市史 史料篇民俗」
 
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