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猟師かんこ踊り(三重県松阪市猟師町) ←前へ 1 2 3 4 5 6 7
全国盆踊り





踊りの全体構成

猟師かんこ踊りの”踊り”は、芸態面や、踊り手の面などから考えて、大きく2つの部分から構成されていると考えられます。
太鼓踊りの踊り子4名による狭義の「かんこ踊り」(太鼓踊り)と、それをとりまく一般の人たちの「うちわ踊り」の2つです。
「猟師かんこ踊り」=「盆踊り」
区分 踊り手 芸態
隊形 振り
@狭義の
「かんこ踊り」
(太鼓踊り)
踊り子
 (4人)
(列踊り)

輪踊り
・かんこを叩きながら跳ね踊る太鼓踊り
「前叩き」
 (4人)
(列踊り) ・最初の「やれやれ音頭」の時だけかんこを叩く
Aうちわ踊り 一般の人

(音頭とり含む)
輪踊り ・うちわを振りながら踊る
重要なのは、行事全体の名称が「かんこ踊り」であると同時に、地域の人々によって明確に「盆踊り」であると意識されている、という点です。

芸態面の中心をなすのは、しゃごまをつけ、かんこを叩く4人の踊り子による太鼓踊りの部分です。現代の「盆踊り」のイメージとはかなり異なるわけですが、この部分も盆踊りの一部であり、また「うちわ踊り」の部分も含めて行事全体も「盆踊り」と呼ばれています。研究上の概念とは異なり、実際の民俗では「盆踊り」の名称も意味も柔軟に使われているわけで、むしろこうした実例から「盆踊りとは何か」が明らかになってくるのではないでしょうか。
踊り手
踊り手は、表のように@太鼓踊り(狭義のかんこ踊り)部分とAうちわ踊り部分で異なります。

太鼓踊り部分は、青年会や小学生から選ばれたメンバーが踊り子となります。お寺での踊りのほか、新盆の各家を廻って踊るなど一晩の踊りの回数が多いため、踊り子を多数確保しておく必要があります。

一方、うちわ踊りは一般の住民の方たちによるもので、人数や参加は自由です。太鼓踊りを囲むように輪になって踊ります。音頭とりの人たちも、ポジションはうちわ踊りの輪になります。
隊形
「輪踊り」と「列踊り」
全体の隊形は、太鼓踊り部分をうちわ踊りの輪が囲む形になります。
うちわ踊りの輪は、つねに「輪踊り」の隊形です。

一方太鼓踊りは、最初の「やれやれ音頭」の時のみ、一列に並んだ「列踊り」の隊形となります。踊り子に一人づつ「前叩き」がつき、踊り子の前に置いた太鼓を叩く、4×4のフォーメーションです。ただし、踊りというよりは、太鼓のパフォーマンスといった内容です。

その後、「道中音頭」「音頭」になると前叩きはなくなり、4人の踊り子が自ら太鼓を叩きながら踊る「輪踊り」となります。


「一般に三重県の念仏踊りは輪踊りの形式をとり、伊賀では唄手・笛吹きが内側、カンコが外側となる。伊勢では踊りの輪の中心に松明か角行燈・高灯籠を立てる。志摩ではこの円陣が三重にも四重にもなる場合が多い。」

            (「東海地方の大念仏」講座日本の民俗宗教6宗教民俗芸能所収)

猟師かんこ踊りも、輪踊りをベースとする念仏踊りといえますが、カンコ(太鼓踊り)が内側に入り、外側がうちわ踊りという、2重の輪踊りの形になります。
「やれやれ音頭」時のポジション   「道中音頭」「音頭」時のポジション
(図:「みえの羯鼓踊」三重県・三重県農業会議 所収図をもとに作成)
ちなみに、伊勢のかんこ踊りでは、伝統的に太鼓踊りの隊形を「カラ」という単位で数えます。1カラは2人で、踊り手一人に前叩きが一人つく単位です。猟師町では現在4カラ(=8人)が基本形です。隣の松ヶ崎町では6カラ(12人)、古くは8カラ(16人)で踊ったといいます。
中踊りと側踊り
太鼓踊りの踊り子は、風流踊りでいういわゆる「中踊り」に、またうちわ踊りは「側踊り」に比定することができます。

中踊りが独立または欠落し、側踊りが盆踊り化していくというのが、風流踊りから盆踊りへの変遷プロセスとして想定されている道筋です。猟師かんこ踊りは、中踊り・側踊りがしっかり残っていること、また側踊りが完全に手踊り化せず、採り物としてうちわを残している点などが、過渡的な姿を示しているのではないかと考えられます。
踊りの種類とプログラム
(1)太鼓踊り(中踊り)

約40分程度のプログラムで以下の1クールの踊りを踊っていきます。

@「やれやれ音頭」(リンク)
最初の踊り。「前叩き」と踊り子による、太鼓を中心としたパフォーマンス。踊り子の前に置かれたかんこを、前叩きが勇壮に叩く。
A「ふれ音頭」
つぎの「道中音頭」へのつなぎ。
B「道中音頭」(リンク)
本格的輪踊り。「おいかけ踊り」と「おいかけ音頭」からなり、それぞれ短い唄が中心。
C「音頭」
踊りの中心部分で、かなり長い口説きなどが唄われる。

Bの「道中音頭」以降、4人の太鼓踊りの踊り子は本格的な輪踊りに入ります。数種類の踊りを数十分かけて踊っていきます。自らの腰につけたかんこを、両手のバチを高く振り上げて力強く叩きながら踊ります。時々、バチとバチを叩く動作も入ります。

ゆっくりと足さばきをしながら歩いて移動する部分と、急調子で跳ねるように動く部分など、なかなか変化に富んだ踊りです。最後の踊り曲「末を申さば」のラストでは、全国の古い民俗芸能に見られるようなテンポアップが見られるのも注目です。


やれやれ音頭(列踊り)

輪踊りの様子

音頭とりの方々
(2)うちわ踊り(側踊り)
  
 1種類で、右手にうちわをもって揺らしながら太鼓踊りを取り巻いて踊ります。踊りながら、音頭とりの音頭を復唱します(「返し」)。

(参考資料)

「松阪市史 史料篇民俗」
「三重県のカンコ踊資料集」三渡俊一郎
「みえの羯鼓踊」三重県・三重県農業会議
「伊勢・伊賀の羯鼓踊」三重県民俗資料記録第三輯

「東海地方の大念仏」講座日本の民俗宗教6宗教民俗芸能
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