アマゾン奥地で盆踊り?
…はじめてその話を耳にしたときは、正直かなりマユツバな印象を受けたものです。
ひたすら日本列島の盆踊りを訪ね歩いていた私たちの耳にも、海外に盆踊りがあるらしいという情報は聞こえていました。しかし、それはきっとイベントや異文化交流などその場限りのもので、毎年欠かさず盆踊りを踊っている地域があろうなどとは思いもよらなかったのです。
ところが、情報はどうやら確実なものであることがわかってきました。
なんと、盆踊りは南米ブラジルにまであったとは!それも単発イベントではなく年中行事として定着し、いまも毎年盛んに踊られているというのです。
しかし、なぜまたブラジルで・・・?
「移民」「日系人」といったキーワードにたどりついたとき、疑問はただちに確信に変わりました。
「盆踊りは、日本列島をはるかに超えた広がりを持っている!!」
ようやく事の重大さに気づいた、2008年。
地球上で最も遠い場所へ盆踊りが伝わって、すでに70年以上が経過しています。
世界に広がる盆踊り
本腰を入れて調べ始めてみると、あるわあるわ…。海外では、予想をはるかに越えたたくさんの盆踊りが踊られていることがわかってきました。
こうなってくると、「盆踊りは、現在世界にどのように分布しているのだろう?」という点が気になります。あくまで年中行事として毎年踊られている盆踊りにしぼってプロットして見ました。その結果、海外における盆踊りには大きな地理的偏りが見られることが明らかになってきました。
特に盆踊りを開催している場所が集中していたのが、「ハワイ」「カリフォルニア」「ブラジル」の3地域です。のみならず、カナダなどを含む北米大陸、そしてアルゼンチンやパラグアイなどを含む南米大陸全体に盆踊りは分布しています。海外における3大盆踊り伝承地域といったところでしょうか。
3つの地域に共通するのは、これらが 新世界 The New World とよばれる世界史的なフロンティア地域であり、同時に明治以来の日系移民の主要な受け入れ先でもあったということです。
海外における盆踊りの類型
一方、こうした日系移民社会での盆踊りとは異なるタイプの盆踊りも海外には見られることがわかりました
戦後、海外に進出した企業の社員とその家族を中心に、海外の多くの都市に「日本人会」等の邦人社会が形成されました。そうした邦人社会の年中行事として盆踊りが開催されるケースも数多く見られます。そしてこれらの盆踊りは「新世界」に限らず、世界中の主要都市などに広く分布しています。さらに、非公式なものや臨時のものなど、数の把捉が困難なものも、さまざまな機会に踊られているようです。
こうした海外で見られるさまざまなタイプの盆踊りを試みに分類したのが、図表2です。
もちろんこうした類型は便宜的なもので、各タイプが重なっているケースなどもあると思われます。しかし、海外ではタイプも様々なたくさんの盆踊りが毎年行われていることははっきりしたようです。
これまで日本列島の中で考えていた盆踊りの分布空間が、一挙に世界へと広がることとなりました。そしてその中でも質・量ともに海外の盆踊りの中心となっているのが、タイプ1「日系移民社会の盆踊り」なのです