お長いお盆のシーズンも、いよいよほんとうの最後です。

始まり方はけっこう全国共通していたお盆ですが、終わり方は
その時期も含めて、実にさまざまです。

そこには、お盆と時間をかけてつきあってきた
それぞれの地域の個性が表現されています。

盆踊りもまた、来年までお休みです。

 

終い盆(しまいぼん)

お盆は「盆月」ともいわれ、一カ月にも及ぶ巨大なまつりの季節でした。送り盆の後もしっかりとお祭りを続けようという地域もありますが、一方で長すぎる期間を短縮しようとする動きも出てきます。「お盆」としてのまつりをいつまで続けるのか、いつどのような形で終わるべきなのか。地域ごとにさまざまな対応のあり方が見られます。

◆灯籠をあげる期間
特に新盆の家では、丁寧にお盆をまつるケースが多く、迎え火を通常より早く行ったり、新盆の家だけ高灯籠をあげる地域もあります。灯籠を下ろす時期も、24~25日や30日(月末)まで灯しておくという例も多く見られます。14日から20日までを盆の祭りの中心とし、この間だけは連夜灯籠を灯すという、栃木県芳賀郡のような例もあります。近世の京都・大阪・江戸では、盆灯籠を盆月が終わっても8月3日まで灯し続ける風習がありました。

◆灯籠やぶり
盆の終わりの象徴的な儀礼として、お盆の期間中灯されていた灯籠をこわす行事が各地で見られます。

伊予大三島などでは、24日の盆の終わりに「灯籠破り」といって灯籠をこわし、切り紙細工を子どもたちに分け与え、夕方に灯籠流しの施餓鬼などを行います。兵庫県三原郡では7月31日を「灯籠おろし」といい、新類があつまって真言念仏を唱えます。

精巧な切子灯籠も最後は
こわされる
(08.08.16 長野県新野)
◆鳥居火
灯籠以外にも、さまざまな火の祭りがお盆の終わりに見られます。長野県松本市付近では、以前盆月の25日~27日にかけて、山上で火を焚きました。大勢の人が持つ松明を遠くから眺めると鳥居の形に見えたので、その名がついたといわれます。大阪府の北部では、24日を終い盆といって、山の上の愛宕社から松明を点じて降りて帰るという行事があります。

八朔

月をまたいだ8月1日=「八朔」を、お盆の行事としていちばん最後の日取りにあてる地域もあります。
八朔は、もともと収穫された最初の穀物(初物)を支配層に献上する趣旨の農耕儀礼で、すでに中世には農村の重要な年中行事となっており、徳川時代には五節供の一つとして公式の祝日でした。さまざまな贈答の行事や、収穫期を前に豊作を祈念する行事など、なかなか豊かな内容を持っています。
◆八朔盆
大阪府三島郡では、月遅れの九月一日を盆の終わりとして「八朔盆」とよびます。新潟県蒲原郡では「盆朔日(ぼんついたち)」と呼び、お供米といって米一升を寺に持っていきます。

◆風の盆
八朔に「風祭り」の性格を持たせたのが、富山県に見られる「風の盆」です。暴風を吹かせて稲に害する悪霊を鎮める行事が、8月1日~3日(いまは月遅れの9月1日~3日)に行われます。

お盆と盆踊り

◆八朔と盆踊り
八朔盆を「踊り納め」として最後の盆踊りを踊るという地方も、関西地方をはじめ各地に見られます。上でも紹介した富山県八尾市の「おわら風の盆」も、そうしたケースの一つと考えれば、やはり広い意味での「盆踊り」と考えることができるでしょう。

踊りの美しさで知られていますが、お盆の名称としても「風の盆」というのは風雅な響きを持っています。地元で聞いた説明では、まつりの代表格である「お盆」を一般名詞的に使った「○○盆」という用例があるので、その一例ではないかとのことでした。日本人にとって、お盆はやっぱり「まつりの中のまつり」であるようです。

八朔に踊るおわら風の盆
( 02.09.01 富山県八尾)
<参考文献>
藤井正雄「盂蘭盆経」講談社
鈴木棠三「日本年中行事辞典」角川書店