盆踊りの具体的な開催日程(日取り)や日数、期間は、どういうしくみになっているのでしょうか。
ふつうのイメージでは、盆踊りが開かれるのはせいぜい1日か2日ですが、地域によっては2カ月近く踊っているところもあるなど、土地ごとの盆踊り文化の違いが出て興味深いところです。そして、日程や期間の決定要因を探る中から、人々が盆踊りに求めたものが浮かび上がってきます。

◆日程ピークは8月13~16日

13日~16日に極端に集中していて、ここが盆踊り開催のピーク期となっています。

このことは、私たちがピックアップした主な伝承系盆踊りの日程調査の結果からも確認することができます(下図参照)。

また、江戸時代の庄屋の日記などに残る「村の休み日」の記録を見ても、江戸時代初期にはすでに旧暦7月13日(あるいは14日)~16日頃がお盆休みとして決められている様子が知られます。

こうした盆踊り開催日程の集中要因は何でしょうか。

すぐに気がつくのは、13日~16日という日程が「迎え盆~送り盆」の日程とぴったり一致している、ということです。すなわち「ご先祖の霊や新盆の霊などの精霊がふるさとに戻ってきている」とされている期間が、盆踊りの期間として選ばれているわけです。このことからも、「お盆に踊る」ということの意味を明瞭に読みとることができます。

 

◆「後半型」の日程(8月16日以降)

ところが、全国の盆踊りの日程を調べてみると、8月16日の「送り盆」(精霊送り)の後に盆踊りを始める地域が見られます。

こうしたいわば「後半型」の開催日程は、秋田の西馬音内盆踊りや毛馬内盆踊りなど東北地方に多くみられるほか、沖縄のエイサー(旧暦盆の「ウークイ(=送り)」のあと)など、本州の縁辺部に比較的多く分布しているようです。

小寺論文では、こうした日程の前後の相違には

①信仰の相違
精霊の「迎え」を重視するか「送り」を重視するか

②目的の相違
送り盆までは亡者や精霊のための踊り、送り盆以降は人間のための踊り

という、2つの側面があることを指摘しています。そのほか各土地土地の地理・気候風土などの事情が影響しているものと思われます。

「後半型」の毛馬内盆踊り

 

◆その他の開催日程

全国的に見られるのが、送り盆の後10日ほどたった8月22~24日前後のいわゆる「地蔵盆」「裏盆」に踊り日を設けるケースです。地蔵盆は、特に近畿地方で盛んで、八尾市常光寺の正調流し節河内音頭も地蔵盆の開催です。

また、旧暦8月1日(新暦ではだいたい9月)ころの「八朔」を踊り日とする地域も多く見られます。八朔は風祭りの日でもあり、有名な富山県八尾の「おわら風の盆」および滑川などの富山県下諸地域のほか、小寺論文では奈良県の一部や茨木、木曽福島などの例を挙げています。

八朔以降はどうでしょうか。奄美大島など南西諸島には、旧暦8月、新暦なら9月に踊る「八月踊り」という芸能が残っています。祖霊を迎える信仰内容や、踊りの芸態などを見ても、非常に盆踊りと近い芸能です。これを盆踊りに含めて考えると、通常の盆踊りピークより1カ月近くも遅い時季まで、盆踊りが開催されているということになります。このあたりが盆踊り日程の下限ということになるでしょうか。

地蔵盆の「流し節河内音頭」
;八尾市常光寺 03.08.23;

盆踊りの構成 Home