全国の盆踊りを調べていくと、多くの地域では「一盆踊り=一会場」とはなっていないことに気づきます。毎日変わる例もあれば、一日のうちに踊り場がつぎつぎと変わっていく例もあります。
盆踊りの場所は多彩なだけでなく、独特の「動き」を持っているようです。ここでは、そんな踊り場のダイナミズムを探ってみました。
◆踊り場の数 - 一つか複数か
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一つの盆踊りで使われる踊り場の数に注目していくと、いつも同じ場所で踊る「単一・固定の踊り場」※1のところと、いくつかの踊り場で踊る「複数踊り場」※2のところがあることがわかります。「複数踊り場」の例は、きわめてたくさん見られるのです。
複数踊り場は、盆踊りの主催者サイドが計画的にローテーションを組んだり、伝承により会場を決めているケースがほとんどで、その意味では踊り場はあらかじめ特定されているのが基本形と言えます。
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※1 新野盆踊り(長野県)、西馬音内盆踊り(秋田県)などたくさんあります。
※2 「複数日程」の盆踊りの場合には、日によって踊り会場を変えるケースがしばしば見られます。岐阜県の郡上踊りや白鳥踊りのような「縁日踊り」が代表的なケースです。
◆「自由踊り場」というかたち
ところが、こうした一般的な形態と違う次元の「踊り場」のあり方もあります。不特定・多数の踊り場が出現する、いわば「自由踊り場」ともいうべき形態です。
たとえば、今は踊り場での踊りの輪を一つに統一している郡上踊りですが、古い住人の方の記憶※1では、誰からともなくたくさんの踊りの輪が自然発生し、人々は自分の好きな踊りの輪を選んで踊っていました。音頭取り同士や踊りの輪同士の対抗などもあり、実に活き活きとした踊り場であったようです。
このように、好きな場所で好きな踊りを思い思いに踊る「自由踊り場」の形態も、かつては全国に広く見られたようです。かつて地域コミュニティの若者人口が多かった時分は、自由な踊り場や複数の踊りの輪というあり方は、むしろ自然なことだったのかもしれません。
一つの踊りで町中が揃ったときの気持ちも心地よいものですが、町のあちらこちらに自然に踊りの輪ができていくという光景も、素晴らしいイメージですね。※2
※1 「私の幼いときは、もちろん旅の方がいらっしゃるはずもなく、近くの人が物陰からわいてくるように集まってきて、踊るのでした。そのころは、街灯などはなく、家々のランプの灯りや、神社の提灯にぼっと灯が入っているだけの中で、好き好きに勝手に音頭をとり、おのおのに輪をつくったようでした。」
(郡上八幡まちづくり誌編集委員会編「郡上八幡の本」はる書房より引用。)
※2 郡上八幡では通常の開催プログラム以外に、「むかし踊りの夕べ」という名で、古い踊りのスタイルを楽しむ試みが毎年開かれています。
各地盆踊りを訪れていると、ときに興奮や気持ちのたかぶりの中から、地元の若者や観光客の踊りの輪が生まれる瞬間に立ち会うこともあります。