ゆったりと巾のある坂道が、ゆるやかに下っていきます。
坂を下りきれば、そこが三春のまちのメインストリート。役場の脇には、今夜の出番を待つ踊り櫓の姿が見えます。ふるいまちと新しいまちがやさしく調和する三春。夏の日差しの中で、うれしい出会いがありました。
たとえば下駄屋。
踊り好きの多いまちには、こういう商売が残っているもの。明治から三代続くという下駄屋のおばあちゃんが、「浴衣で踊りにいくならば」と小粋な桐下駄を選んでくれます。
たとえば地名。
かつて”東北有数”といわれた三春盆踊りの会場は、まちはずれの辻や広場でした。市民の手で建てられた小さなモニュメントには、「踊り場」「せり場」といった地名が彫りも新たに刻まれています。
***
新しい下駄をおろして、月夜の小道をいざ盆踊り会場へ。有名な”滝桜”に模したのでしょう、踊り櫓も花冠をかぶった独特の形。今年から昔ながらのナマウタの音頭が復活するのも楽しみです。熱気あふれる踊り会場で、たくさんの素敵な出会いがありました。
たとえばお囃子。
実力のある盆踊りは、お囃子のレベルも高いもの。櫓の上では、若者たちが太鼓・笛・鉦で力いっぱいパフォーマンスを披露します。息は乱れてもリズムと音程を乱さないのは見事です。
そして踊り子。
突然の通り雨もなんのその。たくさんの踊り好きがボルテージをあげていく踊りの輪は、三春の人びとの盆踊り好きを雄弁に物語っています。「一晩で下駄がペラペラになるんだよね」踊り自慢たちの会話も、あながち誇張ではなさそうです。
お囃子がスピードを上げはじめると、もうすぐクライマックス。踊り子は次第に輪を外れ、手拍子で盛りあげます。興奮と熱狂が一気にはじけて、今夜の盆踊りが終了しました。櫓の上からは、雨の中残ってくれた踊り子たちへのねぎらいの言葉。下からは、囃子方の健闘を称える喝采で答えます。
人びとの暮らしとまちなみの中に、盆踊りはしっかりと溶けこんでいました。
ちいさな城下町・三春は、”盆踊りに愛されたまち”なのかもしれません。
開催情報 | |
---|---|
日程 | 三春盆踊り大会 8月15・16日 (08年) |
場所 | 福島県三春町大町 「おまつり道路」 |
アクセス (公共交通) |
電車 JR磐越東線三春駅より2km, 徒歩25分 |
アクセス (自動車) |
磐越自動車道船引三春I.C.より車10分 |