起源伝承と歴史
◆江戸期に島内で大火があったこともあり、白石踊りの起源をたどる史料は見あたらないようです。
◆起源伝承としては、源平両軍の戦死者の怨霊を慰めるためにこの踊りを始めたという有名な伝承があります。「御霊鎮送型」の起源伝承の一種と言えます。
ただし、島の本格的な集落の形成は江戸期以来とされていることや、芸態の面からも、今の白石踊りの形が近世以降に成立したものであることは、間違いないと思われます。それ以前の盆踊りの存在を示す明確な痕跡は、現在見あたりません。
◆踊りの成立についても、「天才創作説」「僧侶による移入説」などいくつかありますが、いずれも決めてを欠いています。
曲調と踊り方については、東京の佃島盆踊りとの類似性が以前から指摘されており、この点から考えると、近世初期にまでさかのぼって、大阪本願寺信徒・瀬戸内漁民たちの間の古い念仏踊りが伝わった可能性を考える必要があると思われます。
また、12種類の踊りの中には、「おかめ踊り」「梵天踊り」など、近世の修験芸能に広く見られる芸態が取り入れられていることから、白石踊りの芸態形成のプロセスで、何らかの芸能修験者の関与があったことも考えられます。