大津の盆踊り(大津漁港納涼盆踊り)(茨城県北茨城市・8/15)
〜自然体で楽しむ伝承の盆踊り〜
◼️漁業・観光そして文化のまち・大津
太平洋の荒浪に洗われる風光明媚な「五浦」(いづら)の海岸。茨城県を代表する観光・文化リゾート地域です。
ここ北茨城市・大津町はまた、歴史ある漁業のまちでもあります。
漁港併設の「漁業歴史資料館よう・そろー」は震災を経て平成25年7月より営業を再開、物産館や市場食堂も備えた地域自慢の施設。ここが「大津漁港納涼盆踊り」の会場です。
◼️伝承のヤレサ式盆踊り
夕方6:00。大きな踊りやぐらの上では、すでにお囃子と音頭が熱演中でした。
歌も踊りも、ただ一種類。
リズミカルな陰旋法、歌詞や囃子詞の「ヤレサー!」の声、力強さを感じさせる踊り方、踊り櫓の花飾り‥。あきらかに、この盆踊りが北関東から東北南部に典型的に分布するいわゆる「ヤレサ式」の伝承系盆踊りであることを示しています。
私たちが訪れた中では、三春盆踊りに相馬盆踊り(福島県)、日光和楽踊り(栃木県)、そのほかにも秩父音頭などが、同じヤレサ式系統の盆踊りに属します。
ところが自治体や関係者の方に「この盆踊りの名前は?由来は?」と聞いても「さあ‥?盆踊り、でしょう?」と首をひねるばかり。
それもそのはずです。
今でこそ、地域の名前を冠した「○○踊り」という盆踊り名称が全国的にもポピュラーですが、そうした固有名称の多くは、じつは近代以降に新たに名付けられたものなのです。
一昔前までは、どこの地域でも盆踊りの呼び名は単に「踊り」や「盆踊り」でした。盆踊りといえば「わがムラ・わがマチの盆踊り」のことであり、特別な固有名称は必要とされていなかったのです。大津町の盆踊りは、ある意味そうした昔ながらの地域の盆踊りのあり方を自然体で残しているのでしょう。
◼️震災を乗り越えて
午後7:00。
夏祭りの屋台は大盛況。
浴衣姿の人も増え始め、盆踊りの輪もだいぶ大きくなってきました。
3年前に始まった、よう・そろーの「大津漁港納涼盆踊り」。
震災を乗り越え、かつて大いに賑わった盆踊りをふたたび盛り上げようと、地域のさまざまな人たちが保存会を立ち上げて今日に至ります。
チビッコたちの、力強い踊り。
踊り櫓に幾重にも巻かれた、華やかな大漁旗。
「大津の盆踊りはまだまだ健在」‥踊りの輪の中で実感しつつ、われわれも楽しくひと踊りさせていただきました。